「恋人」の読み方
マルセイユタロット「恋人」
L ' AMOVREVX

象徴
- 一人の若者が二人の女性から誘われている。若者は浸りの女性の間に立って、どちらの女性を選ぶか迷っている。
- 若者の頭上には弓を引いているキューピッドがいて、今まさに矢を射ようとしている。
象徴解説
- 二人の女性の間で迷っている若者は明らかに優柔不断である。悩み、迷いに打ち勝つ強い精神力を持って決断しなくてはいけない。
- 若者の向かって左側にいる年上の女性は精神性の象徴であり、彼に努力と内省による真実に満ちた人生を与えるだろう。向かって右側にいる若い女性は現実的、肉体的な象徴であり、彼に安楽で享楽的な人生を与えるだろう。
- キューピットの矢が放たれ若者の心を射抜いたとき、若者が自主的な意思と関係なく盲目的に恋に落ちてしまえば、自分の運命を自らの力で切り開くことなく、キューピットが彼の運命を決定してしまう。出来事が意思と関係なく運命的に決まってしまうのだ。
元型
- 自我(エゴ)
若者は、未熟な自我(エゴ)の元型を象徴している。自我(エゴ)は今、問題に直面している。質の高い人生のためには、表層的な自我の満足だけではなく、潜在意識も含む心全体の中心であるセルフ(自己)による、意識と無意識の調和と統合が必要である。 - グレートマザー(太母)/エロス
向かって左の女性は、高度なエロス=霊的(保護、束縛)な元型の象徴。若者は、太母(自分を保護してくれるもの、あるいは束縛する物)から独立して、真の自分の人生に踏み出し成長しなくてはいけない。 - アニマ/エロス
向かって右の女性は、低度なエロス=肉体的(享楽、安楽)な元型の象徴。若者は、否定的アニマ(自分を誘惑する欲望)に負けず、肯定的アニマ(真実の愛)を知らなければいけない。 - 太母とアニマ
二人の対立する女性が若者に対して選択を迫っている。これは潜在意識(二人の女性)から顕在意識=自我(若者)に対する働きかけを示している。若者(顕在意識=自我)は、その内なる葛藤を調和させて、セルフ=自己(顕在意識と潜在意識の合一した心の中心)に到達することで、質の高い人生、自己実現へ向かうことができる。
向かって左側の女性は霊性、精神性の象徴となり、向かって右側の女性は現実的、肉体的な象徴となる。精神的な生活と現実的な生活を調和させることが真の選択である。
正の意味
- 選択の時。強い意志と決断力が必要。一方を選ぶのなら、もう一方は諦めなくてはいけない。
- 努力して目的、目標へ向かう。良い決断。直観的閃き。幸運をつかむ。
- 恋愛においては、良い出会いや出来事があるだろう。しかし、精神的に成長していないと良い出会いや出来事に気付かないで素通りしてしまったり、対応を間違えてしまったりするかもしれないので、内省、自己との対話を大切にするべきである。
負の意味
- 優柔不断。自分の意思と関係なく運命に流される。迷い、悩んでも答えは見つからない。矛盾した思考、行動。
- 努力より安楽、快楽を求めてしまう。
- 恋愛においては、良くない出会いや出来事があるかもしれない。
考察
- 若者は右側の女性を見ながらも体は左へ向いている。足の向きも定まらない。これは意思が定まらず迷い悩み混乱していたり、意志と行動に相違があり正しい意思決定ができない状態を示している。
- キューピッドの矢は潜在意識や環境、状況などの外部要因の象徴。キューピッドの矢に負けて盲目的に恋に落ちることは、潜在意識の働きかけや外部からの影響にに顕在意識が敗北するという事である。それは、本当の自分自身の意思による選択ではなく、思い込みや偏見を持ったまま間違った選択をしてしまうことや運命に流されるまま選択してしまうことであり、人間性を歪めたり、質の高い人生、自己実現の妨げとなる。
- いつ放たれるかわからないキューピッドの矢は、偶然の出来事や突然の閃きがあることを暗示している場合もある。
- いずれにしてもキューピッドの矢は放たれる。人は自分の意思(顕在意識)だけで選択しているわけではなく、無意識や外部からの影響を常に受けている。キューピッドの矢(潜在意識や外部要因)と若者の意思(顕在意識)を調和させなくては正しい選択はできない。
