「女教皇」の読み方
マルセイユタロット「女教皇」
LA・PAPESSE

象徴
- 教皇冠を頭に戴せ、律法書を手にした女教皇が静かに座っている。
- 女教皇の背後はベールに覆われている。
象徴解説
- 教皇冠は、女教皇が最も高い位の聖職者であることを表し、手にした律法書は、女教皇の知識が叡智(神聖で深遠なる知識)と言えるものであることを示している。律法とは、ヘブライ語の「トーラー(Tora/Torah)」のことを指し、法であり、神の意思を示すものであり、また、教え導くための書でもある。
- 女教皇の背後はベールにより表の世界(世俗)と仕切られている。女教皇は叡智を伝えるに相応しい者にのみ、そのベール上げる。女教皇が本を閉じ、ベールを下ろせば、叡智は閉ざされてしまう。
元型
- グレートマザー(太母)
グレートマザーは愛情と慈悲に満ちた「光」の面と、暗く神秘的で全てを呑み込んでしまう「深淵なる闇」の面がある。優しく慈愛に満ちる反面、高潔、冷徹であるが故に情欲を許さず冷酷無情となることもある。グレートマザーの元型は、世界各地に伝わる女神や魔女、妖精、龍などの形で表現されている。
グレートマザーの持つ母性は自然とも同義であり、母なる星、母なる大地、母なる自然というような言い回しは世界中で用いられている。大地の豊穣や生命の母胎といった大地母神を彷彿とする神話的な象徴でもあり、キリスト教における聖母マリアをはじめとした世界各地に見られる、処女懐胎物語の「聖処女」の元型の象徴でもある。 - アニマ/エロス
アニマは女性原理である。アニマはエロスである。エロスは慈愛、親密である。女性原理は他から動作、作用を受ける力。受動的、受容的。感情豊かで直感的である。
否定的なアニマは、感情的になる。猜疑心が強い。嫉妬深い。
女教皇は極めて高度に発達したアニマの象徴である。
アニマの4つの発達段階「1:肉体的なアニマ」「2:ロマンティックなアニマ」「3:霊性的なアニマ」「4:叡智的なアニマ」のうち、女教皇は「霊性的なアニマ」「叡智的なアニマ」を象徴している。霊性的なアニマは個人的な愛欲ではなく世界全体を愛し慈しむ元型で、叡智的なアニマは内側へ向かう意識が極限まで高まり高次の意識へ到達した元型。
アニマは、男性の心の奥にある無意識な女性的要素といわれている。しかし、社会は男性的価値観によってロゴス原理が優先的であるため、女性が社会に進出した現代では、自分の中の女性原理を押さえ込んで生きていかなくてはならない女性も多く、こうして抑圧された女性原理のために女性の中にアニマが現れることもある。
男性の場合、アニマは潜在意識にアクセスするガイドとして現れることがある。アニマは恋人や娼婦、女神、魔女、妖精など様々な姿で現れる。叡智的なアニマは、知恵の女神として現れて意味や知恵(叡智)を与えてくれることがあるが、この元型は、すでにオールドワイズマン(老賢者)に近いものである。
アニマの発達段階の「3:霊性的なアニマ」の元型が心の中に現れると、聖マリアのようなイメージで純粋な慈愛に満ちた心の女性に憧れるようになる。「4:叡智的なアニマ」は、女神や観音菩薩のイメージで現れ、生きる意味や知恵を与えてくれる神聖で知的な女性に憧れるようになる。
正の意味
- 神秘。秘密。知識と思考、賢く慎重なことで問題は解決する。真摯な学習。情報。大きな問題や障害を直観で解決に導く。
- 内省/自己との対話。無意識を認知すること。目に見えないもの、耳に聞こえないものに気付くべきである。
負の意味
- 謎。闇。わけがわからない。知識、理解が足りていない。事物を表面的にしか理解できていない。考えすぎて行動できない。精神疾患に注意。
- 秘密や隠し事などが露見する。発覚する。
考察
- 教皇(法王=精神的最高指導者)は、通常男性であり、5番目のカード「法王」として描かれている。
- 歴史上、女教皇(女性の法王)が存在したという伝説が残っている。また、13世紀末のイタリアでグリエルミティ(ウィルヘルム派)と呼ばれた異端の宗派に、マンフリーダ・ヴィスコンティという女教皇が実在したと言われている。後に、現存する最古のタロットカードであるヴィスコンティ・スフォルツァ版タロットを作ることになるヴィスコンティ家の女性である。
- 「法王(教皇)」のカードが2枚ある理由、2番目のカード「女教皇」と、5番目のカード「法王」との関連性は、「法王」は威厳ある指導者で、より良く生きるための助言、忠告を与えてくれるカード。「女教皇」は慈愛の教育者でスピリチュアル(精神的、霊的)な特質を持ったカードだと考えられる。
- 受動的な女性原理は精神を外界よりも内側へ向かわせる。女教皇は、潜在意識、霊性を象徴している。インスピレーションは、潜在意識から突然顕在意識に浮上するものである。
